覚悟

足を引きずるようにして家までたどり着いた。
優しい声を出すのが精一杯で、
「大丈夫？」と聞かれるのが辛かった。
お風呂も入れず、そのまま
倒れるように寝てしまった。

相方が「おやすみね」とデコを寝室に連れてきて、目が覚めた。
「遊ぼう！遊ぼうよ！」とぐずりにぐずってなかなか寝なかった。

朝方、泣き叫んでふらふらと寝室から出ていくデコの声を
夢うつつに聞き、
相方がみてくれるのを期待した。
「ママやだ〜！いらない！あっち行って！」と、火がついたように泣いていた。
相方があやしても、泣くばかりだった。
重い頭を持ち上げて、
そばへ行って、だっこしたら、
ふっと、なじんだ。
何となく「ママが具合悪いのが悲しかったの？」ときいてみた。
すうっと泣き止んで、
「うん…悲しかったの…」とつぶやいた。
「ごめんなさい。ママ、大丈夫だよ。元気だから！」と言うと、
泣いていたのが嘘のように柔らかな笑顔になった。

そのあとは、出勤まで二人で語らい合いながらゆったり遊んだ。

そして、私は覚悟をした。一緒にいる時間が限られているぶん、
真剣に向き合おうと。
母としての役割も、感受性の豊かなデコ相手ではごまかしがきかない。
愛するからこそ、妥協しない。