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May 14, 2008

お荷物

7月で、復帰して1年になる。
今まで外勤に行く時間を半日減らして、
実験したり、臨床のデータをまとめたり
いろいろな係をやったりという時間に当ててきた。

そろそろ、他の助手の先生たちと同じように
外勤に出させてもらえないかと、医局長と交渉した。

「外勤に出るなら、2,3ヶ月に一度でもいいから
 当直をやってくれないかな。」

この医局長の出す条件は、おおよそ見当がついていた。
2,3ヶ月に1度なら無理ではないが
今後、後輩の女医たちのために、
先陣を切る私が交渉をする必要があった。

「医局長、今後の女医のリクルートのためには
 育児中に当直をしなければいけないかどうか、というのが
 大きなポイントになると思うのです。
 2,3ヶ月に1度ならば、あともう少し免除していただいて
 『うちでは、産後2年は当直を免除している』という
 売りをアピールするのはどうでしょう」

医局長の反応は、意外なものであった。

「今まで、僕なりに努力してずいぶん君を優遇してきたと思うよ。
 本当は半年交代で病棟を担当するはずのところを
 外来だけでいいようにしているし。
 実は医局長会で女医さんの勤務状況の話が出たことがあって
 他の科はみんな、君のように外来を週2こまぐらいであれば
 非常勤で(無給で)働いてるんだよ。
 『整形外科だけこれ以上優遇されちゃうとこまる』って
 言われたんだよね。
 だから、数は減らすから当直をするっていうのはどうだろう。」

他の科と足並みをそろえなきゃいけないと言われたら
しょうがない、と思うしかなかった。
悔しいのは、週2こまのデューティーの外来の他に
骨粗鬆症や股関節の専門外来にも出ているし
手術にも入っている。
臨床のデータをまとめて発表したり
学生の指導や、面倒くさいいろいろな係りを率先してやってきた。
それらのことが全て評価されず
「非常勤と同じ」
という評価になってしまっていることだった。
それどころか、優遇してもらえないと働けない、お荷物らしい。

要するに、うちの大学病院は
「男並みに働けないやつに、給料はやれない」というスタンスなのだった。

自分の机にもどって
直属の先輩達にぼやいたら
「なんで、
 『うちは、みんなでカバーしあって
  協力して仕事をしている科なんだ』って
 医局長会で胸張れねえのかな。
 ちっちゃい子がいるのに
 当直を強要するほうがおかしいだろ。」
って、言ってくれた。
その言葉だけで、救われた。

重い足をひきずって家に帰ったら
おいしいご飯と、デコの笑顔が待っていた。
それで、もっともっと救われた。

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Comments

はじめまして。テノリ先生のところからやってきました。医学部再受験生のちびりんです。ざっと先生のブログを読ませていただきました。女医って結婚が難しいんですね。私は医学部に入り勉強し医師免許がほしい、結婚もしたい、子供もほしい、わがままな三十路受験生です。お気に入り入れましたのでまた立ち寄らせていただきます^^

Posted by: ちびりん | May 15, 2008 at 08:36 PM

問題提起の渦中にあるのは辛い立場かもしれませんが、「優遇している」ではなくて、「常に理解を示していただいて有り難い」と立てながら、陣地取りをし続けなくてはならないのでしょうね。
「協力体制」「後押し」「支援」どのような言葉が一番いいのかわかりませんが。

そして、にっこり笑って、「私の立場ならどうされますか」「どのようにすれば今まで以上にベストが尽くせるとお考えですか」と静かに切り返していくしかないんでしょうね。

『みんなでカバー 協力して仕事』が科ノモットーですって、医局長会で胸張れる日が待ち遠しいですね。

Posted by: 寧夢 | May 16, 2008 at 08:23 PM

HOORNさま。ご無沙汰しております。
いつもいつも陰ながらでこちゃんに癒されておりました☆
今日、ブログを読んで、思わず泣いてしまいました。
学会発表が終わって、ホテルでお酒を飲みながら、ふと読んだからかなあ。外科の学会も若い女医さんが増えました。外科系医局における結婚や出産などのイベントが、これから10年先には劇的に変わっているのかもしれません。でも今はまだ、あきらめられる事、あきらめきれない事、出来る事、どうやっても出来ない事、なんかがあるのは避けようのない現実ですね。今の時代に大学病院にいるということは、男性であれ、女性であれ、こういう事なのかもしれません。とても素敵な先輩方がいらっしゃるのですね。それも全てHOORNさまのお人柄のなせる技だと思います。陰ながら応援しております♪

Posted by: ぶぶちゃん | May 17, 2008 at 07:20 PM

>ちびりんさま

はじめまして。ありがとうございます。
ちびりんさんのブログも見せていただきました。
夢に向かって努力を続けていらっしゃる、それがそもそも凄いことだと思います。わがままではなく、全て、手に入れられるとおもいますよ。ただ、おすすめは、学生のうちに結婚して子供を産んでしまうことだと思います!医師としての一歩を踏み出す前に、人生の見通しがある程度ついていたほうがいい選択が出来ると思いますから・・・

Posted by: HOORN | May 18, 2008 at 09:02 PM

>寧夢さま
いつも、あたたかいコメント、有難うございます。そして、『「常に理解を示していただいて有り難い」と立てながら、陣地取り』をひそかに進めたいと思います。
『にっこり笑って、「どのようにすれば今まで以上にベストが尽くせるとお考えですか」と静かに切り返』す!!!これですね!!素敵です!
寧夢さんのように、女性として品よく、しなやかに美しく、振舞いたいと思います。

Posted by: HOORN | May 18, 2008 at 09:10 PM

>ぶぶちゃんさま
ブログ、読みました。
本当に、女医それぞれ、状況もそれぞれですからひとくくりにした対応は乱暴ですし、意味が無いと思います。医師を続けていこうと思う女医が、それぞれの形で十分な力を発揮できるようなシステムを作っていくしかないのかな、と思っています。そのためには、立場も状況も異なるそれぞれの女医が、不便さを飲み込まずに訴えていくことが大事なのではないかと思うこのごろです・・・とはいえ、こぶしを振り上げる形でうったえるのはしなやかではありませんが・・・

Posted by: HOORN | May 18, 2008 at 09:25 PM

女の世界と言われる職場に置いても、全ての人が母となるわけではなく、子育てしながら働いていく厳しさを実感するこの頃です。
そして、手に入れることのできなかったあの頃の自分を思うと、これほどまでの思いをして働いているとは気づくこともできずに、やむを得ないムリをこちらが背負っていたと感じていたことを、振り返ります。

立場を変えてみれば、今まで、僕なりに努力してずいぶん君を優遇してきたと思うよといわれる医局長の立場も、つらいところなのかもしれませんね。
寧夢さんの素敵なコメントに私もとても共感します。
パイオニアはいつの時代もかなりのエネルギーを要するモノなんでしょうね。
スタートダッシュを利かせすぎずに頑張ってくださいね。影ながら応援しています。

Posted by: yukidarumako | May 22, 2008 at 10:19 AM

>yukidarumakoさま
ありがとうございます。
yukidarumakoさんの記事をみて感じたのですが、
私は、子育て中の女医とはほとんど働いたことが無いので
その人たちのことを周りがどう感じるか、という
実体験がないから
その無知さゆえに、突き進めたのかもしれません。
珍しいケースだから
生き残っているのかもしれません。
女性の多い職場だったら
また、ちがった摩擦があったのかもしれませんね・・・

Posted by: HOORN | June 24, 2008 at 10:25 PM

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