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December 04, 2006

外科医としての覚悟

前の記事、「頭を離れない患者さん」に対する、寧夢さんのコメントを読んで感じたことを書きたいと思います。

寧夢さんの、『「痛みと不安は主観的な問題だ」と言われて、相手にされませんでしたし、満足な説明は頂けませんでした。』というコメントを読んで、わたしもハッとしました。

整形外科では、手術の「適応」ということを考えるとき、「痛みと不安は主観的」なので「客観的症状」を根拠に手術に踏み切るのが原則、と教わりますし、原則的にはそうあるべきだと思います。

そして、「何とかしてほしい」という願いに対して「手術」という選択肢は、自分の技術に対する自信とたとえよくならなくても責任を持つ、という覚悟がないと、取れません。

人に傷をつけることを許されている唯一の職業であることに、私は常に恐ろしさを感じています。

手術をするということは、人に傷をつけることなのです。

手術をする、ということで患者さんはさらにストレスを抱えることになるのです。

この訴訟のご時勢、「絶対」なんてありえないから口にしてはいけない、と教わりますが「手術をしましょう、絶対よくなります」という気持ちでなければ、医者は手術に踏み切るべきではないと思います。

そして、手術は決して「してやる」ものではありません。

「この患者さんには手術の適応がない」と思ったとき

寧夢さんに説明した医師のように、とたんに「何も手だてが無い」と突き放す医者がいます。

本当は、手術をするという選択をしたときと同じように、手術をしない選択をした場合、とことん「痛み」と付き合う覚悟がいるのです。

私は、痛みを取る武器をたくさん持ちたいと思っています。

それも、正しくて根拠のある武器を。

どんな患者さんに対しても、根拠のある治療を選択できるように、たくさんの引き出しを持ちたいです。

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Comments

Hoornさんの前回のコメントに対するお返事を拝見させて頂いて驚くと共に素直に羨ましいと思ってしまったり。
そうなんですか、使えない医者って淘汰されないんですね。
それってなんだかなぁって感じですね。
命を預かる現場だからこそ、もっとその辺はシビアであって欲しいなぁ。

確かに大学の教員とかも一昔前は一度なってしまえば公務員法みたいなのに守られて、研究とかたいしてしなくても、ポストは上がらないかもですが、定年までのらりくらりとやっていけたけど、今じゃ有り得ない。

最近、専門家であること、プロフェッショナルであることの責任みたいなのをたまに考えることがあります。
本当にHoornさんが仰るように、日々精進して引き出しを増やして、さまざまな要求だったり、状況にきちんと的確な対応ができるということが、専門家(プロフェッショナル)を名乗る責任なのかななんて。
なんとなくでDr.(Ph.Dの方ですが…)を手に入れようとしていますが、そこに付随するものっていうのも今後は考えていかなくちゃいけないのかなと博士論文を書きながら思います。

Posted by: deodeo | December 04, 2006 at 11:50 PM

>deodeoさんへ
 医者はいったんなってしまえば、かなり守られている業種だとは思います。ただ、医者を目指してたどり着いた人たちは故意に傷付けようと思っていない場合がほとんどなので、個人の資質なんだと思います。その点で、「個人の資質」と放置されていることが問題で、評価に基づいて改善させる仕組みを確立する必要があるといえると思います。
 「プロとしての責任」は自分で律するしかないですものね。高い理想をもっていたいなぁと思います。

Posted by: HOORN | December 09, 2006 at 07:54 PM

あれれ、1度送信したのですが、消えてしまっていますね。どうしたのかなあ?
自分の書いたコメントを元に、こんな記事を書いて頂いて、何だか恐縮です。ただ、どうしても家人や自分の入退院が続いたこの1年だったので、何かと医療関係に神経過敏になっているところがあるかもしれません。
根拠のある「痛みを取る武器」・・・心強い言葉だと思います。お忙しい中、私の気持ちにこたえる形で色々述べてくださって、本当にありがたかったです。

ちなみに、「頚椎性神経根症」と言われたり、交通事故の後遺症(いわゆる鞭打ち症候群)も持っている私は、「心療整形外科」のページにもよくお邪魔しています。
色んな意味で「痛みを取る」ことにも敏感になっている私です。(笑)

Posted by: 寧夢 | December 11, 2006 at 01:34 AM

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