女性がひとりで生きるということ
ひさびさに、女医的につぶやく。
外来に、膝の痛い患者さんが来た。
50台の女性。
お酒の匂いをぷんぷんさせて・・・・
一通り診察を終えて、膝の中の靭帯とか半月版とかが痛んでいる状態ではなく、ごく初期のいわゆる「年齢的な変化」であることことを説明した。
「私、痛いのが不安で、自分でも情けないくらい痛いことが怖いんです。今までこういう痛みを感じることは経験が無くて、仕事もがんばってきたし不自由なかったのに、もう歩けなくなるんじゃないかと思って・・・」
私:「あの・・・お酒、よく飲むんですか?飲むと痛みは増しますよ」
「痛くなってから、飲まずにいられないんです。一人でいると不安でどうしようもなくて・・・。友達は心配してくれて温泉にも連れて行ってくれたんですけれど、せっかく行ったのに『どうしたの、暗いね』とかって言われちゃって。暗くなっちゃうんですよ・・・・」
聞くと、一人暮らしで仕事場でも「怖いマネージャー」といわれ、バリバリやってきた方、とのこと。
私:「一人で何でもがんばっていらしたんですね。それが、小さなひざの痛みがきっかけで、色々不安になったんじゃないですか?」
しばらく、下を向いていたその女性の瞳から、涙がこぼれ落ちた。
私:「年齢を重ねれば、どこかしらに痛いところは出てきますよ。腰とか、肩とか。
ずっと同じ部品を使い続けるのですもの、顔にしわが出来るのと同じで、うまく付き合っていくことが、大切だと思うんですよ。
痛いところが出てきて、自分を思って、助けてくれる友達がいることが分ったのですね。」
患者さんは、泣きながら、
「そうなんです。一人で生きていけると思っていたから、痛くて不自由だなんて経験を初めてして不安になって。でも、周りにこんなに、自分を心配してくれている友達がいることが、初めて分りました。」
もう一度、今の痛みは膝の筋力体操で解放に向かうであろうということと、歩けなくなることは無いということを説明し、ご帰宅となった。
人間は、最終的には一人である。
しかし、女として、一人で生きていくことを覚悟するということは
「最終的には一人である」ということと同時に、
「人間は一人では生きられない」ということを、受け入れることだと思う。
しなやかに、自然体で幸せに生きていくために。 一人で生きていけると過信するのではなく、周りに感謝し続けたい。 肩肘を張り続けては、生きられない。
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