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December 05, 2005

決着

昨日、父の信頼する私の従兄弟夫婦と、私の実家に行ってきた。

父は、私の結婚についての最終的な気持ちを

従兄弟と話をしながら、固めたいらしかった。hatsuyuki

つまり、結婚に賛成か、反対か、決着が着くのである。

父が、「今回は、お前と従兄弟だけで来い」と言ったので

相方は、東京でお留守番である。

父が、ゴルフをしながら、従兄弟と密談する間

私と私の母と、従兄弟のお嫁さんと買い物などをしながら、取りとめもない女同士の会話をしながら過ごした。

夜、懐石料理屋さんで落ち合った。

従兄弟が、「わりいな、ゴルフで俺が勝ったら(結婚を)許してくれるって賭けをしてたんだけどさ、負けちゃった。また、今度来ようぜ。」と、冗談っぽく切り出すと

父は「最初は負けてやろうかとも思ったんだけど、やめた。」なんて、いつになく、ニコニコして口が軽い。

きっと、父は、いい話し合いが出来たのであろう。

私が戸惑っていると

従兄弟が、父の気持ちを代弁した。「まぁ、お父さんの気持ちはさ、要するに心配なんだよ。子供が生まれたらどうするのか。お前達が違う夢を持っていながら、二人でやって行けるのか。そういうことがさ。その心配は、実際にちゃんとやっているのを見届けるまで続くんだけどさ。少なくとも、今、お父さんの心配を和らげるだけの姿勢が、見えてないんだよ。」

うんうん、と、父は頷いて聞いている。

父は、『自営業を誇りを持ってやってきた者』として、一貫して同じことを言い続けてきたのだ。今思えば。

そして、自分ではうまく言葉に出来ずに、伝えられずに、じれったさを感じていたのだ。

父が下を向いて、話し始めた。「○○(相方)が家に来た時、『僕の尊敬する建築家は、シングルファーザーとして子供を育てながら、有名な家を設計した人なんです。』って言っただろ。お父さんは、仕事ってのはそんなんじゃ成り立たないと思うんだ。男たるもの、いい仕事をしようと思って没頭する時には、家庭のことなんか顧みられないものなんだ。あいつが、そう言った事で、男としてそんなことでいいのかと、心配になったんだよ。もしかしたら、あいつは、仕事を持つお前と結婚することで、そういう風に変わらざるを得なくて、本当にやりたい事をあきらめて、そう言っているかもしれないだろう。」

「それは、違うよ」

いつの間にか、鼻の奥がしびれてきて、熱くなってきた。

泣いてはいけないと思いつつ、気づいた時には、ぽろぽろと涙の粒が落ちていた。

「確かに、私たちが今まで漠然と考えていた将来のことが、お父さんから課題をもらったことで、二人でたくさん話をして、具体的に考えられるようになった。彼が、心底家を設計していきたいって考えていることも再確認した。彼は家族を自分の手で支えるって真剣に考えているんだよ。この数ヶ月間、自分で設計事務所を起こして『商売』をするようになって、実際に仕事を間近で見て、私のいわゆる『雇われ』ての仕事とは違うけれど、2人で仕事について話し合って行けるし相談にも乗りあうことが出来るって、実感した。違う夢を持っていても、一緒にいられるよ。

そしてね・・・『子供が生まれたって、私は医者の仕事をあきらめたくない。彼は家で、子供を背負いながらでも、仕事をするって言ってくれてるし。』っていうのが、今までの私の考え方だったけど、今はちょっと変わったの・・・

実際子供を育てている友達の話も色々聞いて、私も考え方が変わった。子供を産むって、そんなに簡単なことじゃないよね。無責任に産み落としてはいけないと思う。五体満足の子供が生まれるかどうかも分らない。だから、私、子供が生まれたら、基本的には家で面倒を見る覚悟でいるの。彼は生活を支える覚悟でいる。」

父親と、従兄弟は意外な顔をした。そして、目を見合わせた。父はうなづいた。

実際は、子供を育てながら働くつもりでいる。でも、父親は

「働くことと、子供を見ることというのは、両方、中途半端では出来ない」

と、考えている。どっちにするのか、その覚悟が、聞きたいのだ。

覚悟として捕らえれば、そうならざるを得ない環境になったとしたら、

私は「子供を育てて、夢をあきらめる」覚悟でいるし

相方は「仕事で一家を支えていく」覚悟でいる。

長い、長い沈黙の後、父は重い口を開いた。

「お父さんはな、さっきもマサシ(従兄弟)に話をしたけどな・・・

 結局・・・寂しいんだよ・・・

 今まで、確かに子育てはお母さんに任せきりだったけど、お前にはずいぶん楽しませてもらったよ。お前が言い出したら、親がなんて言ってもやり遂げることはわかってる。でも、だからこそ、反対したんだ。最後の父親の務めとして、結婚してから起こり得る事を、ちゃんと考えて欲しかったし、その答えにお父さんも納得したかったんだ。今は、反対はしないよ。でも、将来を考えたら、もろ手を挙げて賛成することはいつになっても出来ないんだ。そういうことだ。」

これが、父親の精一杯のYESだった。

私は、涙が止まらず、父親への感謝の気持ちで一杯だった。

実際は、もっともっと色々な話をした。従兄弟は、イタコのように父の気持ちを正確に代弁し、私が一生懸命に答えた。父は、最後の言葉以外、ほとんどう頷いているだけだった。本来父は、無口で、必要なことしかしゃべらない人だ。

こうして、不器用な父と、頑固な娘の戦いは幕を閉じた。

「戦い」さえも、本当は存在しなかった。

私達2人が、将来について真剣に考える期間、というだけだったのかも知れない。

この戦いを通して、父の結婚観を理解し、父そのものを理解した。「夫婦共働きで、お互いに仕事も家庭もがんばる」という一般的な答えの先に、父は家族としての幸せは無いと考えている。確かに、「子供」を中心に考えた時、「お母さんが家にいること」が一番幸せなのだという、今は声高に語ることさえ避けられがちな、本当は大切なことを、父は突きつけたかったのだろう。「共働き」は、女のエゴ。女が働かなければいけない状況なら、男のエゴ。私は、許される状況なら、エゴを通したい。誰のために?・・・結局は自分のために。だからこそ、信念を持ってやりたい。仕事も、育児も。

まだ、涙が乾ききらない。

父との別れに。そして、一歩を踏み出す私達の未来に。

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Comments

医師として志を貫いて欲しくて女として育児を全うして欲しくて、そして娘が愛する人と幸せになって欲しくて・・・お父様は複雑な思いなんでしょうね。
反対に負けない!と意志を強くしていたのでしょうけれど、親の愛情の深さに完敗でしょうか?どうであれHOO-RNさんが幸せであれば、一番の親孝行ですね。

Posted by: yukidarumako | December 05, 2005 at 11:08 PM

結局、どこの親も心配でたまらないんですね。
何だか、妹の結婚式の時に、妹と父が泣いてしまって、私も必死で涙をこらえたのを思い出してしまいました。
1年以上たった今も、まだ、ハラハラしているのが手に取るように分かります。
結婚しても心配なのは変わらないようです。

Posted by: Luna | December 06, 2005 at 12:34 AM

やっぱり親の年の功ってやつには完敗だなぁと思ってしまう記事でした。

僕もHoornさんと同じく、お互い自立して好きなことをやっていって、足りない部分を補い合う関係でそれで上手く回るだろうって考え方でいましたけど、今回の記事を読んで、結婚観、恋愛観みたいなのを少し考えさせられました。

うちも親が心配して色々言ってくれてるのは耳をちょっと傾けようかなぁと思いました。

Posted by: Yokoken | December 06, 2005 at 11:26 AM

yukidarumakoさんへ
早速のコメント、ありがとうございました。
おっしゃるとおり、本当に、そのとおりです。
完敗です。ある意味、父が最高に美しい負け戦をしたのだと思います。

Lunaさんへ
私の父も、はらはらし続けるのでしょうね。
父は、結婚式でどんな顔を見せるのでしょうか。
すごくがんばっちゃって、無理にニコニコして
そんな父を見て、私が泣きそうです。
・・・でも、ここまで大げさな事件が起こった後なので、
参列者がみんな父を横目で見ているんだなぁと思うと・・・
結婚式の本当の主役は、父になりそうです・・・

Yokokenさんへ
ことの顛末をすべてみていた、私の弟も、同じようなことを言っていました。
お嫁さんを連れて行くわけですから、
ご両親の結婚観を、良く聞いておいたほうがいいですよ!!マジで・・・

Posted by: HOORN | December 07, 2005 at 01:33 AM

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