愛情チャーハン
今日、実家に帰ってきた。
相変わらず無口な父は、「あぁ」という風に眉を上げただけである。
母が、二週間も前から風邪が治らないという。
鼻声で、咳をしながら
「仕方ないのよ。
私が休んじゃうとお店(自営薬局店)が回らないし
年末で休める状況じゃなくて・・・」
なんて、力なく笑っている。
「もう、今日は私が全部するから。早く寝て!」と
強引に寝かせた。
「じゃあ、一つだけお願い。
お父さんには野菜たっぷりのチャーハンでも作ってあげてね。
私は、油っぽいからチャーハンはいらないわ。」
と、母に頼まれたので、腕を振るってみた。
私が帰ってきてから、「あぁ」としか言わない父の部屋に運んだ。
「・・・いらん。」
「せっかく作ったんだから、あったかいうちに食べてよね!!」
「・・・・」
どういうことかしら!!!と頭に来たが、しょうがない。
台所を片付けていると、
「お母さんに茶を入れろ!」と、父がおもむろにやってきて、
机の上のあんころ餅をほおばり始めた。
「お父さん、チャーハン食べたの?食べたらお皿を持ってきてよ」
「いいから、茶を入れろ」
「食べないんなら、捨てるよ。」
「・・・お母さんに食わなせなきゃ困るだろ。持っていってやれ。あいつが食わないっていったら、食う。」
「だって、お母さんはいらないって言ったもん。違うもの、作るよ。」
「いいから、茶をもってってやれ」
なんだよぉ、と思いつつお茶をいれ、父の部屋にあるチャーハンをとりあえず下げに行ったら、チャーハンが消えていた。
不思議に思いつつ、母の部屋に行くと少しげんきになった母が、
「このチャーハン、おいしかったわよ。油っぽくなくて。ありがとうね。今ね、足が冷たくて寝られなかったら、お父さんがカイロをたくさん入れてくれたの。」
「・・・お父さん、持ってきたんだ。で、自分はお餅食べてるけど。」
「え、どういうこと?お父さんは食べてないの?」
「『お母さんに食わなせなきゃ困る』ってさ。」
「もう一回、これを作ってあげてよ。きっとお餅だけじゃおなかが空くわ。」
台所に戻ると、父が、小さな加湿器付の電気ストーブに、せっせと水を注いでいた。
相変わらず、私には何も言わない。
しょうがないから、私も何も言わずにチャーハンをもう一度作った。
「後で食べてね。」ラップをかけて机の上に置いた。
本当に不器用な人だ。
ただ、信じるしかない。理解するしかない。
悪意の無いこと、行動は愛情があること、
不器用な自分に、自分が一番苦しんでいること。
言葉がたりないだけ。
Recent Comments